ペナンの真珠  2018年8月16日号掲載

コラム  今回は番外編。毎年ライフワークで訪れている北インド・ラダックの村滞在記をお送りします!

ラダックとは
 北インドのジャンムー・カシミール地方ヒマラヤ山脈地帯の標高3000mを越えた砂漠地帯に位置し、冬はマイナス40度にもなる厳しい環境の中、チベット文化に基づいた独自で豊かな伝統文化を千年以上も営み、持続可能な循環型社会のモデル地域としても着目されてきました。近年急速な経済開発と西洋型生活文化の流入、観光地化が進み、伝統、文化、環境破壊(温暖化による氷河の減少、水不足、大気と水質汚染、ゴミ問題等)や様々な社会問題が生まれ、人々のゆたかな暮らしが失われ始めています。一方で、地球的視野で問題に取り組む市民たちの国を越えての協力活動も年々活発になってきています。
 クアラルンプールから飛行機でニューデリーまで約6時間、そこから国内線で約1時間、中心地レーの町の飛行場につくと高山のため空気が薄く、おしゃべりするだけでハーハー息切れ、激しい運動などすると高山病になり命の危険も。高山に体を順応させるため2、3日はゆっくり過ごします。
 ラダックは冬厳しいものの、春、夏は美しい緑が村に広がり過ごしやすい気候。日差しは強烈。古くからシルクロードの中継点でもあり多文化が交流。宗教はチベット仏教中心にイスラム教、キリスト教が共存。チベット仏教のタルチョ(五色の旗)が風にたなびき、イスラム教のモスクからはコーランの祈りの声が響く、異文化共存のゆたかな土地です。

シェイ村滞在記 人と自然がつむぎ出す安心感と平和な空気
 中心地レーの町から車で20分ほどのシェイ村に滞在しました。緑ゆたかにポプラがゆれ、鳥の声、水路を走る水の音、農作業するときの歌声、牛やロバが群れて散歩しているのどかな風景、村人たちに大切されているすてきな村です。毎朝の散歩がきもちよく、すれ違う村人とジュレー(こんにちは)とちょっと立ち話。お茶に家へさそわれることも。人のつながりがある村の温かさとなんとも言えない心地よさ。おだやかなしあわせ感につつまれます。
 レーの町から遠ざかるほど循環型の伝統社会の村(お店もなくお金もいらない村も)が残っていますが、シェイの村では、伝統文化が息づく中、近代化する現代ラダックの生活スタイルです。ちょうど、50年前私が育った子ども時代の日本の田舎が懐かしく思い出されます。さて、シェイ村で人々はどんな風に暮らしているでしょうか。ゲストハウス「ポロハウス」に滞在しました。家族は、お母さんのソナムさん、長男のツェワンさんとお嫁さんのディチェンさん、二人の8ヶ月の赤ちゃんアンモちゃん、ツェワンさんの弟タムチョスさん、この家で暮らし学校に通っているタイヤスくんの6人です。(以下敬称略)

厳しくも美しい自然、いのちの力
 ラダック伝統料理は大麦と小麦粉が主食。インドの他の地域に比べ、あまり辛くなく日本人の口にもあいます。ポロハウスの家庭料理はまろやかな優しい味でとってもおいしく野菜料理中心で庭の畑で栽培している無農薬野菜を使っています。飼っている牛のミルクの手作りヨーグルトはとても新鮮でおいしく、ヨーグルト嫌いだった私をヨーグルト好きにさせるほど。食べ物にパワーがあるのか、土地にパワーがあるのか、ラダックに来るとあまり食べなくても元気で体調よく、瞳も輝き生き生きとしてくるので不思議です。

堅実で質素。必要なものは十分に足りている。余分な欲はかかない。隣人どうし助け合って暮らしている
 ソナムお母さんはとっても働き者、牛の世話、ミルク絞り、畑で野菜づくり1日中活動しています。ミルクと野菜を売って収入を得ています。ラダックでは女性が男性以上にたくましいと言いますが、まさにそんな感じです。給料などは平等で男女差別はないが家事は女性が担当。男性は木を切ったり外仕事をするそうです。ツェワンやタムチョスは朝会社に行く前、夕方帰宅した後によく外仕事をしているので感心します。一般的勤務時間も日本より1〜2時間短いようで、時間にも余裕があります。時々近所の人がなにげなく立ち寄りお茶していきます。仏教の行事、冠婚葬祭、農作業など村人たちが協力して行っているので地域の交流も活発です。ツェワンが言います。「私たちは、堅実で質素。必要なものは十分に足りている。余分な欲はかかない。コミュニティの絆が強く隣人どうし助け合って暮らしている。」彼はラダックの開発をサポートしている地方政府の会計の仕事をしています。次男のタムチョスも政府の仕事をしていて、村の開発(橋や道路の建設)、ゴミのリサイクルなどの仕事をしています。遠くの村にも出張しとてもアクティブです。ラダックの男性はワイルドでたくましいです。さすが厳しい自然環境と共存して生きている人々です。

純粋であたたかいラダックの人々。仏教の教えをベースにした精神性
 ツェワンの奥さんディチェンは公立学校の先生です。生徒は12才〜17才の40人。こどもには楽しく学んでもらいたいそうです。教育熱が高まりつつあるラダック、いじめがあるかと聞くと、あるけどシリアスなものではないそうです。ラダックの子供も大人もとてもやさしく温かい人が多いようですが、そのことを話すと、仏教の教えをベースにした精神性があり、子どもの頃から慈愛(たとえば貧しい人にお金など施す等)などを教えられるそうです。また、それは生まれながら自然にもっている性質だといいます。ダライ・ラマのテーチング(法話)も毎年あるそうです。ディチェンは現在8ヶ月の女の子アンモちゃんの産休中、家族ぐるみで育児に奮闘し賑やかな毎日です。ラダックでは自然分娩が年々減っているそうです。ディチェンが出産したときは病院にいた赤ちゃんの約80パーセントが帝王切開で生まれていたそうで、まさか、ラダックでもとびっくりでした。生活スタイルの変化が原因のようです。
 そして、タイヤス(11才)。明るく、お話大好きでいつも元気な男の子。彼は家族と血縁関係はないですがポロハウスで暮らし町の学校に通っています。ここに来た時は読み書きができなかったので、ツェワンとタムチョスに文字を教えてもらったそう。学費は校長先生がスポンサー。バス代はソナムお母さんが牛のミルクを売ってまかなっているそうです。ラダックでは親に育てる余裕のない子どもを養育し学校に通わせている家庭は普通によくあるそうです。タイヤスの夢はお医者さんになること。学校から帰ると宿題をしてから外に遊びにでかけたり、牛を牧草地から連れて帰ったりしています。しかし近年ラダックのほとんどの子は宿題を済ますと外に出ず家の中でテレビを見るようになってきたと聞きました。それでも、ゆったりとした暮らしのリズム、人々のつながりは健在です。毎年、ラダックにくると「生きた心地」がするなぁ〜と私は思います。多忙な現代社会にまかれ、すっかり忘れ去っていたなつかしく、たいせつな何かを呼び起こされるようです。

ゲストハウス「ポロハウス」
 ポロハウスは2014年にスタート。お客さんはインド国内と日本、ヨーロッパ、東南アジアなど海外からも。リピーターも多いそうです。庭で一緒に畑仕事したり、ラダックの伝統料理をつくったり、近くのインダス川への散歩を楽しむこともできるそう。また、行きたいところがあればガイドや車の手配等もしています。ポロハウスには集会ホール(ゾムサホール)があり、ワークショップなどもできます。ツェワンの夢は、ポロハウスに世界中から人が訪れ、いろんなこと(地域経済やグローバル問題、ラダックに関すること等)を話し合い創造する環境をつくること。屋上に星を見ながら飲んだりできるスペース作りも考えているそうです。季節は8、9月が庭のオーガニック野菜の収穫がありお勧め。お祭りが多いので時期を合わせてくると楽しめるそうです。

ゆたかな地球社会の共同創造
 今、ラダックでは社会問題に取り組む一般市民の活動がとても活発です。
教育、福祉、環境、様々な分野で現地NGOが活躍、また海外からの協力活動も活性化しています。美しい大自然の中で、地域のことを考える普通の人たちが、異文化交流を楽しみながら、ともに学び、遊び、働き、暮らしやすいまちづくりを地球的視野でしていく、ゆたかな地球社会の流れが始まっています。

*ラダックでは観光客によるゴミ問題等の環境問題が深刻化しています。訪れる方は環境への配慮が必要です。


筆者から
ペナン島の朝はなんといって気持ちいい。鳥の鳴き声が美しく響き、朝陽が登ると空と海が水色やピンクに刻々と変化、何か特別なこともなくても一日の始まりがうれしいです。「東洋の真珠」と古くから言われている島なのも納得。しかし現代のペナンは都会化して通勤ラッシュの渋滞と騒音はかなりのもの。それでも島の自然のパワーは負けていないな〜と感心です。by ペナンの真珠


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ラダックに向かう飛行機からの眺め。
ヒマラヤ山脈地帯を越えていく。
いままで見たことのないような色合いの風景

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村人によく手入れされた道と水路。
朝の散歩がとてもきもちいい

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風に揺れるポプラ(ユラート)の木々。
家を建てる時の梁や柱の材料になる。
ラダックの空はすごく青い、夜は空いっぱいの星々に

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毎朝ソナムお母さんは牛を近くの牧草地につれていく。
また夕方迎えにいく

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ラダック伝統料理チュウタギ(ラダック式団子汁)
粉を水でといたものをこんな型にして野菜等で煮込む
ラダックは大麦、小麦粉が主食

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ディチェンさんは毎朝出勤前にシェイパレスに散歩しお祈りしている。
なかなか登るのに体力がいります

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シェイパレス(王宮)の頂上から村を一望 なんと美しい村!
インダス川の源流が流れている。
遠くの山の麓に見える緑は別の村。
ラダックは広大な砂漠地帯にこんな風に村が点在している

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タイヤスくんに連れられて村をぶらぶら。
友達の家によってお茶したり、ゴンパ(寺)を見に行ったり

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チベット仏教のマニ車。
村のあちこちにあり人が通ると回していく。
一回まわすと一回お経を読んだのと同じ功徳が得られるそう。
気合を入れて回すタイヤスくん。
片手でも簡単に回せます

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ゲストハウス「ポロハウス」と家族
左からタムチョスさん(次男)、ディチェンさん(長男のお嫁さん)、タイヤスくん(11歳)、ツェワンさん(長男)、ソナムお母さん、アンモちゃん8ヶ月(長男夫婦の娘)

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屋上にあるソーラーヒーター。
体を洗うとき使うお湯は太陽光発電。
後ろにある緑のタンクは給水用