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K・K 2018年5月17日号掲載

 

マレーシアの伝統文化は、ここから
~コタバルの旅~

ピックアップ  マレーシア東海岸クランタン州の州都で、タイとの国境近くに位置する町“コタバル”。住民の大多数がマレー系で、マレーシアでもっともイスラム色が強いとされる。標識はすべて、アラビア語とマレー語の併記だ。

 マレー語で“新しい町”を意味するその街を訪れると、その名の通り、マレーシアにおける数々の伝統文化の原点であることに思い至らずにはおれない。本日は、マレーシア文化が生活の中で息づき、濃密な時の流れる緑豊かなコタバルの魅力をレポートしよう。

観光名所に見るイスラム文化
 コタバル観光で決して外すことのできないイスタナ・ジャハール。旧王宮で、五角形のポーチが目を惹く、王族の伝統と慣習を垣間見ることのできる博物館だ。旧王宮の至るところには、“カタングリ”という日本における欄間(らんま)のような透かし彫りなどの木工美術が施されている。「元来、イスラム美術では、人間を含む動物をモチーフとすることができません。これらのデザインは、すべて当地の植物から着想を得たものです」とのガイドの説明から、いかにクランタン州におけるイスラム文化が敬虔な姿勢に基づいていたかが伺われる。王族が使用していたとされる布地にも驚かされた。「こちら、日本の着物に用いられる技術の一つ、“絞り”と同じでしょう?」と、知日派の男性ガイドが示した展示物は、まさに我々お馴染みの絹の絞りだった。日馬の文化が共通することが伺える心地よい空間、イスタナ・ジャハール。必見だ。

バティック生産地
 マレーシアには600軒のバティック工房が存在するが、うち500軒はクランタン州にあり、さらにそのうち200軒は、コタバル市街地からパンタイ・チャハヤ・ブラン(海辺の町)へ通じる道沿いにあるという。「外の仕事も家の仕事も切り盛りするクランタンの女性は働き者ですよ。染めは主に女性が行いますが、外での仕事が困難になる雨季は、バティック作りが彼らの主要な収入源です」と、バティック工房主は語る。

凧作り名人もコタバルに
 マレーシア観光局のポスターや観光雑誌に度々登場する、マレーシアの誇る伝統凧作り名人、シャフィー・ビン・ジュソー氏は、コタバル近郊に工房を構える。工房を訪れると、その繊細な絵柄、エキゾチックでありながら決して上品さを損なわない品々を、身近に堪能し、運が良ければ、シャフィー氏が黙々と作業する工程を観察することが可能だ。その小さな作業場では、シャフィー氏の後を継ぐ決意を固めたお孫さんが、尊敬のまなざしで氏を見つめながら、自身も凧作りに励んでいた。氏の穏やかな表情は、美しい伝統が途絶えることなく後世に続くことを確信する表れなのかもしれない。

瓦の特徴
 市街地の伝統家屋の屋根瓦には特徴がある。先端が美しく反っているのだ。これは舞を踊る女性の手先の表情を模しているという。また、その屋根の構造は実にシンプルな造り。「自然環境が厳しいので、屋根はすぐに傷んだり破損します。直ちに修繕できるよう、シンプルな瓦を用い、接着させず、枠に引っ掛けるだけという構造にしています」と、先述の男性ガイド。
 その瓦屋を訪れたところ、新しい瓦のみならず、古い瓦も安価な値段で取引されていた。葺き替え後の瓦で破損していないものは、商売対象になるのだという。さて、この瓦。アートの材料や調理器具としても用いることができないかと思いついたのだが、「非常に壊れやすいので、クアラルンプールに到着した時点で破損しているかもしれませんよ」との言葉に、今回は購入をあきらめた記者だった。

タイとの国境の町らしい食
 クランタンの人々の食に欠かせない品、それはブドゥ。魚醤の一種で、他の地域では、このブドゥを知らない人も多いという。生姜の花、ネギ、ライム、チリ、刻みキュウリなどの薬味を入れ“ブドゥたれ”を作り、焼いた魚や生野菜につけていただく。コタバルでもっとも有名で大人気の広大なレストラン“ナシ・ウラム・チグ”では、ビュッフェ形式にも関わらず、訪れる誰もが、この“ブドゥたれ”をテーブルに置いていた。強烈な臭いと塩加減だが、薬味を入れたタレを野菜や焼き魚につけると、クセが旨みに変わり、非常にマッチし、食が非常に進むから不思議だ。
 さて、先述のとおり、コタバルはタイとの国境近くに位置する。そのため、タイの“スナック”であるカドック(Kadok)をいただく食習慣を有する。このカドック。実に自然で健康的、かつ楽しい。手巻き寿司を自ら作りながらいただく感覚と同じだ。葉にナッツ、乾燥小エビや小魚、ココナッツフレーク、刻んだチリと生姜を乗せ、黒蜜をかけ、ライムを絞って、くるんでいただく。素材を聞いただけでは味の想像ができないと思われる。不思議な味なのだが、これがどうして病み付きになる美味なのだ。チリを外してみたり、生姜をなくしてみたり、黒蜜をかけなかったり、ライムを絞らなかったりと、様々なパターンを試してみた結果、“全乗せ”がもっとも美味であることが判明。コタバルのセントラルマーケットなどでカドック・セットを購入可能。ぜひお試しいただきたい。

1日の滞在で、1週間分リフレッシュ
 作業工場の眼前で牛が草を食み、人々はカフェでお茶をしながら海風を浴び、子どもらはその周囲で凧を揚げる、海と緑と伝統が見事に生活と融和する街、コタバル。今回のコタバルでの滞在日数はたったの1日。ところが心も体も脳内も、1週間のんびりリゾートで過ごしたかのようにすっきりリフレッシュされていた。「コタバルから仕事でクアラルンプールに来ましたが、到着した途端にコタバルが恋しくて仕方がありません」と語った、コタバル在住の女性の言葉をふと思い出し、納得した。

 独特の文化と伝統が心に懐かしいコタバル。マレーシアを知るには、訪れなければならない街の一つである。




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五角形のポーチが目印のイスタナ・ジャハール

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五角形のポーチ

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美しい透かし彫りは館内のいたるところで見受けられます

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イスタナ・ジャハール内は、美しい透かし彫りでぐるりと囲まれています

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カタングリ展示コーナー

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見事なアンティークのカタングリ

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イスタナ・ジャハール内の美しい鉄製螺旋階段

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絹の絞りを発見

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コタバルから観光名所の一つ”パンタイ・チャハヤ・ブラン”への通り。この通り沿いに、バティック工房がずらりと並びます

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バティックの染付作業を行う女性たち

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別名バティック通りと言われる通りには、このようにバティックを乾燥させている光景を頻繁に見かけます

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凧作り名人のシャフィー氏の工房

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工房の中には大小さまざまな美しい凧がずらり

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月をモチーフとした凧

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”うずら”をモチーフとした凧

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猫をモチーフとした凧

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名人シャフィー・ビン・ジュソー氏

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マレーシア観光局のポスターに載るシャフィー氏.

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伝統工芸技術を後世に繋げる大役を担う、シャフィー氏の後を継ぐお孫さん

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後を継ぐお孫さんも凧作りに精を出します

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海辺で凧を揚げる少年

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屋根瓦の先端は美しい手先のように沿っています

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舞いを踊る女性の手先を表現したとされる屋根の先端

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伝統建築物の屋根

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屋根瓦を内側から見ると、枠にシンプルに掛けているだけの構造

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瓦屋で販売されていた古い瓦

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瓦屋における新しい瓦。肉や魚を「瓦焼き」できないかと思案中の記者

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ブドゥはクランタンのソウルフード。各種売られています

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ブドゥはスーパーや空港でも販売しています

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ブドゥに薬味を淹れたところ

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①セントラルマーケットで購入したカドック・セット

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②カドックセットの封を開け、チリなどを細かく刻み

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③葉の上にナッツなどをすべて乗せ

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④ライムと黒蜜をかけてくるんでいただきます

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セントラルマーケットで東海岸名物のクロポレコーを発見!

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マーケットの魚は超新鮮

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実にカラフルなセントラルマーケット内

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コタバル名物の牛肉フロスとチキンフロス。”でんぶ”のようにご飯などにかけていただきます

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コタバルで一番人気を誇るレストラン”ナシ・ウラム・チグ”

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ナシ・ウラム・チグでの料理のラインナップ

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ナシ・ウラム・チグにて。厳選したつもりが、いつのまにかこんな風になってました

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コタバルのみなさんは、とにかく生野菜を沢山食します

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忘れてはならない、クランタン名物のナシ・ケラブ

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ナシ・ウラム・チグの値段表

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パンタイ・チャハヤ・ブランのオススメカフェ。海風を感じながら心地よい時間を過ごせます

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車道そばでは、のんびりと牛が草を食んでいます