K・K  2018年1月11日号掲載

 

“売り買い”を越えたところにこそ、モールの意義がある
~Sunwayモール&テーマパークCEOに聞く、「これからのショッピングモール」~

ピックアップ  1970年代、マレーシアにおいて1軒しかなかったショッピングモール。いまや500軒以上が林立、その大半がKLならびに近郊に集中する。郊外では、空きスペースが目立ち人影がまばらなモールが存在する一方、今なお続々と新規店舗がオープンを続ける。

 ショッピングモール過剰供給状態とも言える過酷な環境下において、人々が集い続けるモールが存在する。ピラミッド、プトラモール、ベロシティらのサンウェイ・モールだ。この度、サンウェイ・モール&テーマパークCEOであるH.C.チャン氏にインタビューを敢行、なぜサンウェイには人が集まるのか、そして「これからのショッピングモール」について話を伺った。

サンウェイ・モールの現在
 この20年でクランバレーに4軒、ペナンに1軒のショッピングモールをオープンしたサンウェイ・モール。100,000sqft.のギザ、1.9 mil. sqft.を誇るピラミッドに至るまで、各コミュニティに応じた面積・個性を有するのが特徴だ。テーマパーク、人気ホテルを有することで、1997年7月にオープン以来、世界の観光客を惹きつけてやまないピラミッド、チェラス/アンパン地区で初の1 mil. sqft.を超えるモールとなったベロシティ、ペナン最初の現代的モールのカーニバル、F&Bおよびコミュニティハブであるギザ、安定したマーケット内に位置するプトラ。それぞれの強みを生かし、“地元に愛される”店舗作りを目指している。今後はペナン、イポー、ジョホールに新規物件を、さらにはカーニバルおよびピラミッドの拡張を予定している。

サンウェイの最重要課題は?
 サンウェイ店舗内外では、数多くの警備ならびに民間警察が目を光らせている。「モール運営上の最重要課題は警備です」とチャン氏が語るとおり、サンウェイ・モールグループ全体で警備に関わる者は5,000人を超える。「サンウェイでは、館内の警備にはセグウェイ(電動立ち乗り2輪車)を用いています。視線が高いため犯罪を見つけやすく、また、素早い移動が可能なため、検挙率がアップする上、犯罪の抑止にもつながります」。さらに、サンウェイ・ピラミッド前には警察署が設置されており、万が一の際の迅速な対応が可能となっている。サンウェイ・モールと地元警察が一体となって、訪れる人々を守る体制が整えられているというわけだ。間もなく迎えるチャイニーズ・ニューイヤーなど、祝祭日のモールは犯罪の温床とされる。ある他モールにおける同個所で1日に5件以上のスリが発生しても犯人が検挙されなかったという事件が発生した際、話を伺いにサンウェイ警察署を訪れた記者に対して、「サンウェイではこのようなケースは決して発生しえません」と胸を張る警察官の言葉が実に印象的だった。

現代の“市”であるべき
 「私が幼い頃、朝夕にパッサー(市場)を両親と訪れるのが日課でした。時が経ち、そこかしこに立っていた市は減少。地元の人々が日々訪れていた大切な場を、モールは奪う結果となっています。だからこそモールは、人々が気軽に立ち寄り、必要なものを手ごろな価格で手に入れることができる場、“現代の市”であるべきと考えています」と、チャン氏はモールの立ち位置に対する自身の考えを語る。

“売り買いを越えた場”としてのモール
 サンウェイ各モールにおけるカフェスペース、レストランは3割~4割を占めるように設定されており、人々が集えるきっかけとなるイベントは、ピラミッドだけでも年間300~400件が企画されているという。 「あの若者たちをごらんください。中学生の彼らは、友人らと公園を歩いている感覚で、このショッピングセンターを訪れています。これこそが私の望むモールの形です。コミュニティの場、ふらりと歩くことが楽しい場、友人らと大切な時間を分かち合う場。“売り買いを越えた場”にこそ、モールの意義があります」と、若者たちを優しく見つめるチャン氏。IT、テクノロジーが普及し、想像以上に人々の繋がりが希薄になっている現在、挨拶を含み、当たり前のように交わされてきた些細な会話さえ、若い世代は交わさないとされる。その関係の希薄さが、昨今のマレーシアにおける自殺率の増加に起因していると専門家は指摘する。「昨日のテレビ見た?」、「親とケンカしてさ」、といった軽い会話を、モール内を歩き回りながら、時折お茶をともにしながら交わしてほしいと、チャン氏は切望する。

Eコマースとショッピングモール
 「今の、そしてこれからの課題はEコマース(インターネット上での売買)との共存です」とチャン氏。まだ安定した物流が確立していないため、日本や欧米ほどEコマースは普及していないが、時間の問題とされる。Eコマースへの対策、それは“五感”がキーワードだとチャン氏は語る。「見て、聴いて、香りを感じ、触れ、味わうことを存分に楽しむ。ネット上では味わえないこと、“体験の場”作りに努めることが課題です。また、“人が人らしく”いられることを目指し、コニュニティの一員として、その一翼をモールが担うべきでしょう」。

人々の長い人生に根付けるよう
 「マレーシア人はモール好きなんですよ。外は暑いですからね。日中涼む場所が必要なんです」とチャン氏は笑う。だからこそ、Eコマースが発達しても、モールはなくならないと推察する。しかしながら、KL中心部の巨大ショッピングセンターから郊外の各モールに至るまで、入店するブランドの顔ぶれに大きな違いがないにもかかわらず、人の集まるモールと集まらないモールが確かに存在する。「コミュニティの人々の長い人生に根付けるよう、今こそ長期的視野に立ち、ビジョンのあるモール作りに務めなければならないと思います」。

 2時間弱に渡るインタビューの中、チャン氏は「コミュニティ」という言葉を数えきれないほど口にした。地元の人々がパッサー代わりに必要なものを買うために訪れ、若者が公園のように友人らと歩き、大切な家族や友人らが集い笑い合う。インタビュー会場となったピラミッドは、まさにそのようなモールだった。


Sunway Group
www.sunway.com.my




写真
サンウェイピラミッドの目玉であるスケートリンク。
友人と楽しそうに滑る来場者

写真
オープンスタイルのレストラン。
平日でも、どの店も人々で賑わう

写真
インタビュー当日に行われていたSKⅡのイベント会場

写真
同じくインタビュー当日に行われていた、サンウェイ大学学生による卒業製作発表会

写真
行きかう人々に卒業制作を紹介する学生

写真
行きかう人々に、卒業制作を紹介する学生

写真
季節のカード作りを体験する来場者

写真
平日の昼間にも関わらず、大勢の人が行きかうモール内。
パッサーのように小さな店が多く展開

写真
家族、カップルらが、公園代わりにモールに集う

写真
「どこでお茶する?」と相談しあう若者たち

写真
あちらこちらで人々が集う。
モール内はまさにコミュニティ・スペース

写真
エスカレーターでも警備員とすれ違う

写真
トイレのチェックに向かうセグウェイに乗る女性警備員

写真
館内を友人らと歩く人々と警備員。
サンウェイ・モールの通りを歩いていると、すぐに警備スタッフと出会う

写真
サンウェイ・モール&テーマパークCEO H.C.チャン氏