K・K  2017年10月26日号掲載

 

大学ラボ発“シントク石鹸”
~あっという間にドイツで注目された100%オーガニック・薬効石鹸とは!?~

ピックアップ  ドクター・リズ。USM(ペナン)卒、味の素を経て、再び学問の世界へ戻り、UUM(ケダ)で博士号を取得。UUMでポスドクを含む数多くの研究員を率いるマイクロバイオロジストであり、アジアン・ハラル協会理事長も務めている。

 リズ氏の研究室で試作した石鹸がフェイスブックで紹介されるや否や、瞬く間に人々の注目を集め、遠くドイツでも、皮膚疾患で悩む人々の間で評判になる。石鹸に含まれる薬効成分のSINTOK(シントク)とは?また石鹸誕生の秘話を、リズ氏ならびに研究室のポスドクらにインタビューしたのでご紹介しよう。

研究天国の“味の素”勤務時代
 「私は、大変すばらしい日本人との縁を重ねて今があります」と語り始めるリズ氏。USM卒業後、味の素の門を叩いたとき、彼女を評価し、採用してくれたのは日本人上司だったという。「ホウジョウ(北城氏)に見いだされ、研究者としては天国のような環境で、研究三昧の日々を過ごしました」。「天国のような環境とは?」との問いに、「試してみたいと常々考えていた天然素材がすべて研究室に揃っていました」と目を輝かせる。その後、さらに専門性を追求するために大学に戻ってからは、東大、早稲田大などの研究者との縁を経て、今、思うままに研究生活を続けていられると、感謝の言葉を何度も口にする。

皮膚病治療研究
 USM時代から、抗生物質を用いずにいかに皮膚病を治療するかの研究を行っていたリズ氏。魚を用いた実験では、スターアニス(八角)を中心に、ナツメグを加えたものが効果的であることを発見する。UUMでは、植物から薬効成分を抽出する優れた装置を用いて研究を続けるが、リズ家に代々伝わるある植物を用いた家庭療法に着目。その植物の薬効成分研究を主なテーマに、研究室メンバーらと試行錯誤を重ねている。

SINTOK(シントク)
 その植物の名は、SINTOK。UUMが存在する村の名もSINTOK。タイ南部からボルネオに至る熱帯雨林に自生する植物で、ケダ州SINTOK地区に属するものが、もっとも薬効成分が優れているという。「この地の名がSINTOKになったのは、もっとも優れたSINTOKがこの地に自生していたからとされています」と、リズ氏の研究室でポスドクを務める男性が胸を張る。リズ家の曾祖母らは、石鹸やシャンプーなどは用いず、SINTOKの根を叩いて割いて湯に浸し、その湯で全身を洗い、頭皮がかゆい時などは、湯に戻したSINTOKの根で頭をマッサージしていたという。

リズ氏自ら皮膚病に悩む~SINTOK石鹸の誕生
 2017年1月。リズ氏の顔全体に突然黒い斑点が生じる。新しく購入した化粧品によるトラブルで、その化粧品を用いて太陽光を浴びたことによる疾患であると即座に判断。「鏡を見ては嘆いていたところ、母から、『研究者にしか作れない肌に良いコスメを自分で作りなさい』と背中を押されました」。早速、SINTOK抽出液で石鹸と抽出液ゼリーを作り、両者のみを毎日使用したところ、1か月で黒い斑点が消える。リズ氏はその結果に満足したものの、当初は商品化の考えはなかったという。ところが研究室メンバーの「皮膚疾患で困っている方がいるはずです! facebookで紹介してみませんか」という声に後押しされ、SNS上で紹介したところ、問合せが殺到。ドイツの研究仲間からも、「商品を持って、シンポジウムで講演してほしい」との依頼が舞い込む。2歳以上の子どもの皮膚疾患にも効果が認められるなど、SINTOK石鹸と抽出液ゼリーは、知る人ぞ知る注目製品となる。

「私は科学者」
 その後、リズ研究室から、緑茶石鹸、アロエベラ石鹸などが次々に誕生。「薬効成分の抽出は難しく、抽出を誤ると成分が安定しないため気を遣います。また、グリセリンとして、遺伝子組み換えではないUSA産有機大豆を用いるなど、主原料以外もすべて100%オーガニックです」とのこだわりの品々は、人気が出ないわけがない。「私は科学者。研究成果で社会がハッピーになってくれることが何よりも願い」と語るリズ氏は、製品の宣伝はこれまでしてきてはいない。「目下の課題は、熱帯雨林の中から成分抽出に適したSINTOKを見つけられる人を育てること。また、持続可能性を考慮し必要量のみを採取し、乱伐を防ぐ取り組みも考えなければならない。大学構内でSINTOKを生育することも検討しています」。

 リズ氏と研究室メンバーによる、人と社会への熱い取り組みに喝采。


Dr. Risyawati Mohamed Ismail

研究所
Dadi Kinasih Industry Sdn Bhd:Innovation & Commercialization Centre, Universiti Utara Malaysia, Sintok 06010 Kedah

電話
02-585 8064

Eメール
drrisyawati@gmail.com




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01SINTOKの木。枝から根がぶら下がっているため、根を掘り起こす必要はなく、持続可能な原材料です.tif

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こちらがSINTOKの根

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SINTOKには発泡成分のサポニンが含まれているため、発泡剤が不要です

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SINTOK抽出液

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SINTOK石鹸。SINTOK抽出液をたっぷり含んでいます。「1滴でも入れればSINTOK石鹸を名乗れますが、こちらの研究室の品は有効成分がふんだんに用いられています」

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静岡産緑茶を用いた緑茶石鹸。シミの軽減にはこちらが効果的とのこと!静岡産緑茶を用いるのは「薬効成分に優れているため」

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研究室で石鹸製造中のドクター・リズ

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リズ研究室所属のポスドクのお2人

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ドクター・リズ