【特集】クアラルンプール日本人学校



K・K 2017年7月13日号掲載

 

ロボティクス講義で才能を発揮する子どもたち
〜世界最前線で活躍する研究者の授業に、新たな夢を見出す〜

ピックアップ  2017年6月15日、16日の両日、在マレーシア日本国大使館附属クアラルンプール日本人会日本人学校において、長澤純人准教授(芝浦工業大学機械機能工学科マイクロロボティクス研究室)による「ロボット特別講義」が行われました。小学4年生~中学1年生の児童・生徒およそ300名、保護者100名が、各学年それぞれ2時間に渡る熱のこもった講義に、熱心に耳を傾けました。

世界の最前線で活躍する研究者による授業の意義
 世界のロボット工学を牽引する日本。その分野の最前線を走る長澤先生の専門はマイクロロボティクス。1000分の1mmという極小単位の精度で創りだされるロボットだけに、「ホコリやチリが存在すると、ロボットは動かなくなります。クリーンルームという空気が清浄で温度が23度に年中保たれた部屋で、顕微鏡をのぞきながら作ります」と、まずはご自身の研究に関する説明から講義はスタート。「今後、大震災時等において、36度くらいの温度を有するものや、二酸化炭素を検知する小さなロボットを、ヘリコプターから多数投下する研究をしています。なぜでしょう?」との問いかけに、「人は36度くらいの体温だから」、「人は二酸化炭素を吐くから」、「災害被害にあった人々を助けるため!」。続いて、小さなロボットは昆虫をお手本にすると良いことを示し、その理由を尋ねます。思案する生徒たち。「小さな生物にとって、空気は水のように重く、身動きがとりにくいものです。そのため、虫独特の動きをします。小さなロボットにとっても同様のため、虫を参考に造りだされます」、との明快な説明に、一同、冒頭の数分でロボット研究の意義と基本を理解。「危険な場所で人間に代わって働いていたロボットですが、これからは生活のあらゆる場にロボットが登場します」と長澤先生。しかし、「不必要な機能は鬱陶しいよね。そのためには、しっかりしたプログラミングが必要。また、便利な道具として扱えるようにするには知識も必要」と、プログラミングの重要性にさらりと切り込みます。
 ロボティクスの世界を知り尽くすとともに、製作されたロボットを社会のために活用する専門家の言葉は説得力を有し、「自分も人の役に立つロボットを作りたい!」という思いを、子供達の心にあっという間に芽生えさせました。

長澤先生も思わず絶句。プログラミング素質を表す子どもたち
「ロボット、無茶苦茶作りたくなりましたー!」という言葉が口々から飛び出してきた講義前半を終え、10分休憩。友達と雑談しながら時間を過ごすのかと思いきや、実物ロボットの並ぶテーブルにダダッと集まり、興味津々。長澤先生は質問攻めに。休憩時間は、子どもたちにとっては一層ロボティクス知識を深めるものとなり、先生にとっては水を一口飲むためだけの時間となったのでした。大熱狂の「休憩」を終え、声の枯れ始めた先生の講義後半が始まります。「ロボットに、“右足を前、左足を後ろ”、と指示を与えると、ロボットはどのように動きますか?」との質問に、サッと手を上げる数人の子どもたち。「左に回転します!」との即答に、長澤先生、思わず絶句。実際にシンプルなプログラムを作成、ロボットにインストールすると、途端に左に回転を始めるロボット。想像力と工学基礎、プログラミング素質を示す子どもたちが各学年に複数存在することに、芝浦工大チーム、教員、保護者が一様に驚きます(ちなみに記者は、その場で右足前、左足後ろ、と自分の足に重心をかけて試さなければ理解できませんでした)。
 続いて、プログラミングの基礎知識を身体で覚えるため、ロボットに与える指示を自らに課し、先生のカウントに合わせて全員で一斉動作!逐次処理、条件分岐、繰り返し、入れ子構造を学びます。最後は、ロボットを正しくライントレースさせることができるか、ロボットに出す的確な指示についてグループ討議。2時間に渡る充実の講義で、ロボットプログラミングの論理を一気に習得。素質を有する子どもたちが、各学年多数存在することが顕在化する有意義なイベントとなりました。

「実際にロボット作りたい!」
 大学の開講期間中である現在、授業の合間を縫って来馬してくださった長澤准教授。難解な専門知識を簡単に理解できるように完璧に準備されたパワーポイント、興味を絶えず惹きつける順序立ったトーク、終始注がれる優しい視線で、会場の大人も子どもも魅了します。「プログラムは書かれたとおりに動きます。プログラムした人の“思い通り”に動くものではありません」との言葉に、「ロボット作りたい!思い通りに操作したい!」と、関心を高めた生徒たち。欧米では国が率先してプログラミング学習を子どもたちに推奨。オバマ前大統領による子どもたちに向けたメッセージが大きな反響を呼びました。国力にも影響するロボティクス。近い将来、子どもたちの希望が叶い、彼らの素質を伸ばすためにも、論理講義だけではないロボット&プログラミング製作授業を受けられる日が到来しますように!

 「本日ロボットに関心をもってくださったみなさん。10年後、私の研究室にぜひお越しください。一緒に新しいロボットを造りましょう!」、との長澤先生の言葉に、新たな夢に目を輝かせる子どもたちでした。




写真
「身体を使ってプログラミングの基礎を学びましょう!」

写真
プログラミングに入れ子構造を、体操しながら実践!

写真
4択問題では、ABCDと選択肢の書かれたカードを示して回答します

写真
大変わかりやすく作成されたパワーポイント(プレゼンツール)

写真
「はい!」と全員元気に先生の質問に手を上げます

写真
長澤先生もびっくり!
難しい質問に正解を素早く回答する子どもたち

写真
優しく丁寧に解りやすくロボット工学とプログラミングを説明してくださいます

写真
右の3人の男の子たちに注目。
先生の話に夢中になり、徐々に、ずいずいっと前に進んでいきます

写真
グループに分かれ、正確にライントレースさせるためのロボットへの指示を討議します

写真
ロボットらしいロボットの登場に、子どもたちは大興奮

写真
小さなライントレースするロボット

写真
休憩時間、レゴや玩具ではない、専門家が製作する本物のロボットを真剣に見つめる子どもたち

写真
休憩時間の様子

写真
休憩時間は質問の嵐。
どの質問にも優しく丁寧に答えてくださる長澤先生

写真
授業後の風景。
次の授業が始まるにも関わらず、会場に残ってロボットを見つめ、先生に質問する子どもたち

写真
子どもたちがロボットに夢中になる様子を目の当たりにした父兄のみなさん。
先生にマレーシアでいかにロボティクスを学べるかを質問します

写真
長澤純人准教授(芝浦工業大学機械機能工学科マイクロロボティクス研究室)




K・K 2016年12月8日号掲載

 

子どもたちの、子どもたちによる、子どもたちのための50周年

ピックアップ  2017年1月27日、在マレーシア日本国大使館附属・クアラルンプール日本人会日本人学校において、開校50周年記念行事“JSKL祭り”が開催されました。昨年11月に開催された記念式典は、50年に渡りお世話になった関係各位に謝意を贈るためのものでした。今回のイベントは、生徒たち自身が「50周年を思い切り楽しもう!」と、自ら企画、手作りしたもの。当校がグローバルに活躍する人材を数多く輩出する理由が伺える、創意工夫と笑顔の溢れる祭りの様子をご紹介しましょう。

弾ける笑顔と挨拶
 「おはようございます!」、「こんにちは!」。校内に足を一歩踏み入れた途端、すれ違う子どもたちすべてから、清々しく元気な挨拶を次々と受けます。その気持ちの良いこと!挨拶は、「相手に心を開くこと」、「相手を認めること」の表れ。「心を開いてもらえること、相手から認めてもらえることは、こんなにも嬉しいことなのだ」と子どもたちから教えられる、素敵な一日の幕開けとなりました。

黒子に徹した上級生
 本イベントでは、中学3年生は幼稚部の子どもたちのアテンド役を務めました。小学生、中学1~2年生が模擬店やワークショップを開く中、それらの会場を小さな手を引き訪れ、可愛い後輩たちが楽しく遊ぶ手伝い役に徹し、上級生としての優しさや大きさを示しました。

驚き満載、学ぶこといっぱいの“幼小中交流会”
 まずは中学1、2年生の企画による、幼稚部・小学部所属の可愛い後輩たちのための国語、数学、理科、社会、英語の体験ワークショップ会場を訪れます。社会科ブースはすでに小さな先客でいっぱい。「火縄銃1丁の値段は現在の価値だといくら?」などの質問に、明るく答える子どもたち。一方記者は、「考えたこともなかった・・・」。お隣のブースは、英語の質問に答えながら先に進む「英語迷路」。「taggingの意味は?」。冒頭の質問に「taggingだから、名札かな?」と左へ進むと、「残念でした!」と退出を促されます。「街中のあちらこちらで見られるスプレーペンキによる落書きのことだ」と気付いたときは後の祭り。気を取り直して理科ブースへ。白い液体入りの大きなボウルに手を突っ込み、大人も子どもも大いに盛り上がっています。「片栗粉と水を混ぜただけの液体です。ゆっくり手を入れると、手は沈みます。素早く叩くとどうなるでしょう?」との理知的な誘導に従い、液体に拳を振り落すと、「お!硬い!」とびっくり。「粒子と粒子の間に入り込む水の関係に起因するダイラタンシーによるものです」との中学1年生の説明に、「言葉は頭に入ってくるのだけど、意味がさっぱりわからない・・・」と頭を抱えます。数学ブースでは計算テトリスや魔法陣、国語ブースでは辞書引き競争。詰め込み式ではなく、「すべての勉強が実社会に生かされる」または「勉強することでこの世の謎を解くことができる」ことを、五感を通じて学ぶ子どもたち。「考え、自分で解を見つける」習慣を自然に身に着けることで当校の生徒たちはグローバル人材に成長するのだと、その理由が明らかになったワークショップでした。帰宅後、記者がダイラタンシー理論を徹底的に調べたことは秘密です。

マレーシアと日本の伝統文化を楽しく体験!
 小学部の生徒らによる模擬店では、マレーシアの伝統凧である“ワオ”の塗り絵、バトゥセレンバン(小石遊び)、セパタクロー(藤球)体験ショップが開かれていました。集中してワオの塗り絵に勤しむ子、バトゥ(小石の玩具)を高く放り過ぎて上手にキャッチできないと四苦八苦する子、セパタクローに挑戦しつつもサッカーのようにゴールする子など、マレーシアの伝統文化に思い思いに触れる子どもたち。一方、日本の祭りらしく“縁日”も見られ、子どもたちは釣りゲームや福笑い、けん玉、駒、お手玉にも挑戦。「マレーシアにおける日本人学校」としての魅力を存分に発揮する各模擬店で、大人も子どもも大いに楽しみました。

襖が刷新された“馬来西庵”~鎌倉から渡辺ご夫妻が来馬~
 さて、日本人学校には「日本文化資料室“馬来西庵”」があります。日本を遠く離れた児童、生徒らに日本の伝統に触れ、体験してもらうもので、格子戸、枯山水、風炉、畳、雛人形、そして襖が配され、現代日本の家屋においてすら見られなくなった貴重な姿を示しています。こちらの襖が、50周年に当たり新たに表装され、美しく蘇りました。表装を請け負ったのは、渡辺表具店を営む渡辺富男(一級表具・壁装技能士)・久子ご夫妻。本イベントへの招待を受け、笑顔と歓声の沸く本イベントを心ゆくまで楽しむ渡辺ご夫妻。「襖、表装といえば日本国内の仕事に限られると思っていました。自分の技能をマレーシアで役立てることができるとは、夢にも思いませんでした」。日本の文化を一層海外に周知すべく、渡辺ご夫妻の今後のご活躍に心から期待します。

日本人学校初のイベント
 「日本人学校では、年間を通じて数多くのイベントが開催されますが、それらはこれまでの慣習を踏まえた伝統行事です。今回は、“自分たちのやりたいことをやる”と、児童・生徒らが一から考え企画した、思いの詰まった初のイベントです」と、目を細める宮谷真一郎校長が温かく見守る中、まさに“子どもたちの、子どもたちによる、子どもたちのための50周年記念行事”は、成功裏にその幕を閉じました。




写真
手作りの会場案内図

写真
”単なる目標”に終わらない、JSKLの児童・生徒たち

写真
児童のお手製による”提灯”が来校者をお出迎え

写真
模擬店が開かれていた6年生の教室前。
室内だけではなく、外の飾りにも余念がありません

写真
幼稚舎の子どもたちを優しく引率する中学3年生

写真
中庭に面した校舎の一画で壁画を共同製作中。
壁に絵を描く醍醐味を満喫中します。
楽しそう!

写真
思い切り手を伸ばしてペタリ!

写真
壁画が遂に完成しました!

写真
目隠しをして、いざ、福笑いに挑戦!

写真
上級生から顔のパーツを手渡ししてもらいます

写真
顔の形、大きさを手で確かめながら、パーツを的確に置きます

写真
見守るこちらがびっくりするほど完成度の高い福笑いの完成です

写真
英語迷路にいざ挑戦!

写真
社会科ワークショップブースで、問題を披露してくれる中学2年生

写真
ダイラタンシ―の原理を紹介するポスター

写真
ダイラタンシ―実験中。面白い~!

写真
大いに賑わっていた教科体験ワークショップ会場

写真
バトゥセレンバンに一生懸命挑戦中。
思いのほか難しいかな?

写真
マレーシア伝統の凧、ワオの塗り絵ワークショップ

写真
「4年2組の模擬店にお越しくださーい♪」

写真
縁日の各種アトラクションに参加した児童へ賞品は、手作りの折り紙アート♪

写真
伝統絵柄のメンコにびっくり!「日本文化資料室から借り受けてきました」

写真
見事に蘇った襖の前に立つ渡辺富男・久子ご夫妻

写真
「今回のJSKL祭りは、これまでの伝統行事とは異なり、
子どもたちの発案による、初めてのイベントです」と、
説明に力を込める宮谷真一郎校長




K・K 2016年12月8日号掲載

 

さらなる一歩のために
〜日本人学校開校50周年記念式典 開催される〜

ピックアップ  在マレーシア日本国大使館付属・クアラルンプール日本人会日本人学校は、2016年の本年、開校50周年を迎えました。2016年11月21日、宮川眞喜雄大使、マージタ・ビンティオーマル マレーシア教育省プリンシパル・アシスタント・ディレクター、太田健司日本人会会長、外処敏彦日本人商工会議所会頭、地元警察、歴代校長、地元インターナショナル校校長らを迎え、記念式典を開催。更なる一歩を踏み出すための記念すべき一日となりました。

日本およびマレーシア国家を歌う子供たち
 式典開始予定時刻10時。時計の針が10時を刻むと同時に流れる開会宣言。参集者全員により「君が代」が斉唱されます。続いてマレーシア国家“ヌガラク”の伴奏が流れると、生徒たちは大きな声で見事に歌い始めます。マレーシアと日本を確かに繋ぐ小さな大使たち。実に頼もしい存在です。

教師2名、児童数14名でスタート
 1966年11月、キアペンに位置する当時のジャパンクラブハウスを仮校舎として、教師数2名、児童数14名で日本人学校はスタート。タマンセプテ校舎を経て、1993年、児童数増加に伴いスバン校舎へ移転、現在に至ります。

当たり前のことを毎日一生懸命~そして出会いにありがとう~
 宮谷真一郎校長は式典で、50周年を無事に迎えられたのは地元の皆様のお蔭と深く感謝の意を述べるとともに、子供たちに対して、「当たり前のことを毎日実行することこそ大切。その積み重ねにより、将来、世界で活躍することが可能となります」と、“挨拶、掃除、人の話を真剣に聞く、運動や勉強を一生懸命行う”ことの重要性を説きます。また、「生徒のみなさんから日々、勇気、感動、希望をもらっています。みなさんとの出会いに心からありがとう。明日からまた頑張っていきましょう」と心のこもったメッセージを送りました。

「100周年を迎えられるよう、1人1人が努力します」
 生徒代表として挨拶の壇に立ったのは、中学部所属、ラジャブルック会会長の愛澤誠司くん。「今日のJSKLがあるのは、先生やスタッフ、生徒皆の努力のお蔭です。そしてこれからは、100周年を迎えられるよう、私たち1人1人がさらに頑張っていきます」と決意を新たにしました。

卒業生からトロンボーンの贈り物
 日本から本式典に駆け付けたJSKLの卒業生 長谷川賢治さんが、「学校で永く愛用していただけるものを」と選定されたトロンボーンを、同窓生を代表して在校生に贈りました。

記念コンサート~“さとうきび畑”をじっと聞き入る生徒たち~
 ソプラノ歌手の寺島夕紗子さん、ピアニストの服部真由子さんを迎えて行われた記念コンサートでは、“さとうきび畑”が披露されます。まずは、この唄を作詞作曲した寺島尚彦さんを父に持つ寺島歌手が、先の大戦における沖縄戦への想いが唄の背景にあることを説明。“ざわわ”という風の音に込められた多くの思いをしっかり受け止めた子供たちは、11連からなる10分を超えるこの曲に終始じっと聞き入りました。
 コンサートの締めくくりは、生徒による“ふるさと”合唱。来場者の心を大いにゆさぶり、式典は幕を閉じました。

記念植樹~ときわまんさく~
 来賓、生徒らによる記念植樹では、“ときわまんさく”が手植えされました。「直ぐに大きくなることはなく、綺麗な花を咲かせる」ことが選定理由とのこと。100周年に向けて、子供たちとともに、ゆっくり美しく成長してくれますように。




写真
”ふるさと”を合唱する生徒たち

写真
温かいメッセージを生徒たちに贈る宮谷真一郎校長

写真
生徒を代表して挨拶する愛澤誠司くん

写真
”さとうきび畑”を歌うソプラノ歌手の寺島夕紗子さん

写真
式典の様子

写真
”ときわまんさく”の記念植樹

写真
前校長の中村清忠先生(左)。
歴代校長も参列しました




 


KL日本人学校

Saujana Resort Seksyen U2, 40150, Selangor

www.jskl.edu.my