日本の“うまみ”を世界に発信! 和食の巨匠 村田吉弘さん

ピックアップ  2月17日、マレーシア日本大使公邸にて、ミシュラン3つ星老舗料亭「菊乃井」(京都)の店主であり、NPO法人日本料理アカデミー理事長を務める和食の巨匠村田吉弘氏による“うまみ”に関する講演・実演会が行われました。KL初開催となる本講演は、すべての来場客に驚きを与え、会場は大いに盛り上がりました。

日本の料理文化はガラパゴス ~低カロリーの秘訣は“うまみ”にあり!
 「1か国を除くすべての国で、オイルまたは脂肪をメインに料理が行われています。日本のみが“うまみ”を中心に料理する、いわばガラパゴスです。鎖国時代に動物脂肪をとらなかったため、うまみを生かすというユニークな料理文化が発展したのでしょう」と村田氏。そのうまみを活かした懐石コース(デザート前まで)は、65品目で1,000kcal。一方フランス料理のコースは25品目で2,500kcal。“うまみ調理法”では、2倍以上の品目を用いてもカロリーは半分以下。和食が低カロリーである秘訣は“うまみ”にあったのです!

「これまでの出汁のとり方は間違っていた!」~科学による“うまみ”の検証
 出汁といえば昆布と鰹節。前者には“うまみ成分”であるグルタミン酸、後者にはイノシン酸が含まれています。「昆布は60度の湯で1時間煮出した後に取り出し、85度まで温度を引き上げ、鰹節を投入。沈んだら濾します。これが科学的にもっとも“うまみ”を含む出汁の引き方です」との説明に、日本人の間でどよめきが生じます。「そうです、従来の伝統的な出汁の引き方は間違っていたことが京都大学での研究の結果、判明しました」。昆布は水から、鰹節は沸騰してから投入していたのは、記者だけではなかったようです。

いざ、実験!~「あなたは“うまみ”を感じますか?」
 来場客に、まずは「うまみとは何か」を体感していただかなくてはなりません。そこで、グラスに注がれた昆布出汁がゲスト全員に配られます。グラス半分を飲んだ時点で「うまみがわかりましたか?」と村田氏は尋ね、多くの方が首を振ります。「では、目の前の鰹節を1枚手に取り、舌にしばらく載せてください。その上でもう一度、昆布出汁を口に含んでみてください」。途端に「おお!」と声が上がります。昆布と鰹節との相乗効果により“うまみ”が際立ち、舌の受容体が一気に目覚めたようでした。

世界中のシェフが“うまみ”に着目し始めた!~伝統素材を用いずに“うまみ”を作る
 レストランnoma*のオーナーシェフ、レネ氏を含む世界の著名料理人が京都の村田氏を訪れうまみを学ぶ昨今。うまみ研究は着々と進み、伝統素材以外でも同様に抽出されることが分かっています。今回、グルタミン酸を含むドライトマト、イノシン酸を含む鶏ひき肉、グアニル酸(しいたけのうまみ成分)を含むアミガサダケ(morel)を用いた出汁の引き方が実演され、来場客はそこに“うまみ”をしっかりと確認することができました。

ハラルに近い料理、それが日本料理
 「日本料理は、ハラル料理にもっとも近い位置にあるでしょう」、と村田氏。豚肉、酒やみりんを使わずに料理することは可能であり、みりんについては半量の砂糖で代用可能とのこと。和食がユネスコ世界無形文化遺産に登録され、日本発の“UMAMI”が、甘味、辛み、苦み、酸味に新たに加わった今、日本料理が世界中のどなたにも愛される日が来ることは夢ではありません。

もうからない仕事の方が大切
 村田氏は、「食の弱者(食の選択肢がない人たち)を救う」ことをライフワークとしています。世界には、オイル過多の偏った食事を余儀なくされる食の弱者が多く存在します。「医者と料理人はレシピを公開しなければならない。そうすれば、後進の者は、そこからスタートすることができる」、「もうからない仕事の方が大切なことがある」とも語る村田氏の言葉に、一流の料理人は世界を変えうるのだと確信しました。                    

*noma:「世界のベストレストラン50」で過去4度首位に輝いたデンマークのレストラン




写真
「うまみ」について講演する村田氏(右は通訳の方)

写真
シェフの話に熱心に耳を傾けるお客様

写真
実験!昆布のみのお出汁でうまみを感じることができますか?

写真
昆布、鰹で出汁をとった海老真蒸の椀物

写真
実験に用いられた鰹節

写真
実験2!鶏、アミガサダケ、ドライトマトのお出汁(塩・醤油入り)のうまみは科学的には同じです!

写真
ドライトマト(手前)とアミガサダケ

写真
鶏、アミガサダケ、ドライトマトで作る出汁

写真
出汁作りのデモンストレーション

写真
出汁をこす村田シェフ

写真
出汁を試飲するお客様

写真
村田シェフの説明を真剣に伺う各国シェフの皆様

写真
どちらのお客様の質問にも、懇切丁寧に答える村田氏

写真
こちらの松花堂弁当、450kcal.

写真
松花堂弁当を楽しまれるペトロナス会長ご夫妻

写真
うまみを存分に味わい、「おいしい」を連呼されていたフランス人シェフ